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国境と文化の壁を越え、多くの人々の心を掴んでいるINUPATHY。クラウドファンディングで話題を集めたINUPATHYは各メディアに注目され、日本国内に留まらず、北米や地球の裏側の南米にまで広がり、各地で注目を集めています。そんな注目すべきペット向けウェアラブルデバイスを実現するに至った開発者山口さんのお考えや今までの経験について、また商品を通じて実現したい“これからのペットと人間のコミュニケーション”について、お話を伺いました。

■ INUPATHYとは?“愛犬の気持ちに寄り添う”ペットのウェアラブルデバイス


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今回、インタビューしたINUPATHYの山口さんは、INUPATHYの生みの親であり、代表者です。INUPATHYは、イヌの心模様によって、ハーネス部分に装着したLEDの色が変化する最新型ハーネス。心拍センサーから読み取られたデータによって、リアルタイムで変化する仕組みになっています。ひと目でイヌの気持ちが伝わる色合いが、イヌから目を話せないデザインになっており大好評の商品です。

■ 作りたいのはモノではなく、飼い主さんの“発見”。

—— Webサイトにもご紹介がありましたが、“愛犬の気持ちに寄り添う共感デバイス“というのは、どういうものかについて、ぜひ聞かせて下さい。

「『INUPATHYすごいですね』と言ってくれる人がたくさんいて、とても嬉しいのですが、すごいのは、お客さんがINUPATHYを見て、ワンちゃんについて何かを発見したことがすごいんだと私は思っています。その発見の機会を作るのが、INUPATHY。なので、私の仕事は、飼い主さんの発見を作ることだと思っています。心拍数はデータのままだと、何も価値がないので、それを見て、うちの子、どうしたのかな?何か怖いものでもあるのかな?と、少しでも考えてあげるきっかけを作ることに価値があると思って作っています。」

イヌパシーに関する記事を見た人の中には、イヌの翻訳機と思われた人もいるかもしれませんが、山口さんが作られているのは、“イヌが言いたいことを伝える装置”ではなく、“イヌと人間のコミュニケーション媒介ツール”。商品開発から設計・デザインにおいても、その思いが垣間見られます。

■ スマホではなく、ずっと愛犬を見つめられる設計に。

「イヌパシーは、光るハーネスだけでなく、受け取ったデータを自動で読み取ることができるアプリもセットになった商品です。ハードウェアとソフトウェアのデザインする際に考慮したのが、飼い主さんが携帯よりも、イヌを見てくれるようにしています。なので、ハーネスの上に、イヌの心の様子がわかるLEDをつけました。そうすれば、スマフォを見なくとも、イヌの気持ちがキャッチできます。」

イヌパシーが入居するコワーキングスペース内で、イヌパシーをつけたあかね(代表山口さんの愛犬)が登場すると、そこにいる人が集まり、自然と会話が生まれていきます。光るハーネスの様子が違和感なく視界に入り、あかねを囲んだ会話が続き、あかねも満足気。商品だけではなく、コミュニケーションまでデザインされた商品になっています。
 「スマホばっかり見ていると、犬も怒りますからね(笑)。」

■ 動物との向き合い方に疑問を感じた研究室。だからこそ、動物の心を感じられるデバイスを作りたかった。

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——翻訳機ではなく、イヌの気持ちに寄り添うデバイスというコンセプトの発想はどこから来たのでしょうかか?

「大学では、動物行動学を研究していましたが、研究そのものが自分に合わなくて、研究をやめて就職しました。振り返ってみて気づいたんですが、その時やめた経験が、INUPATHYの開発に大きく影響しているんですよね。その頃は、研究の世界では、心があるのは、人間だけというのが常識でした。これは、昔の有名な研究者の発言が影響されているのですが、有無をいわさず、動物の心の存在は否定されていました。そこに、歯がゆさを感じました。そんなわけはないと。それに、不思議と研究者は、研究においては動物の心の存在は認めないものの、自分のペットの話をするとき、まるで心があるように話すんです。不思議ですよね(笑)」

システムエンジニアとして就職した後、動物の心の存在に焦点を当てた商品、“愛犬の気持ちに寄り添う共感デバイス INUPATHY“の開発を決意し、起業にいたったというわけです。

■ 作って気づいたイヌの環境の重要性

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「INUPATHYに教えてもらったことがあります。犬を飼うと、飼い主さんはどんな環境でも飼い犬をコントロールしなければならない、という気持ちになってしまいます。突然、吠え出してしまった犬を見て、一緒に混乱してしまう飼い主さんは少なくありません。
INUPATHYを装着してわかったんですが、イヌの心はとても環境の影響を受けます。苦手な環境にあると、どうしたってイヌは吠えるときは吠えるんです。人間も、ライブ会場で受験勉強しろと言われても、無理なものは無理ですよね。それに似てると思います。どんな環境下でも飼い主さんがイヌを完全にコントロールする、というのは無理だと思います。
ならば、イヌの得意な環境、苦手な環境をできるだけ把握して、得意な環境にできるだけ近づけるように配慮してあげればいい、と思うようになりました。もちろん、どうしても苦手な環境を避けられないときもありますが、INUPATHYのような学びの助けになるツールがあると、次の対応につながります。それでいいや、と思えるようになりました。いつも変わらぬ環境に配慮してあげても、イヌは吠えるときは吠えるんです。イヌは些細な環境の変化で怒ったり、不安になったりするのですが、イヌの得意な嗅覚や視覚から得た情報に影響されているのではないかと考えるようになりました。それを飼い主さんが全て把握して、支配するのは無理です。そういう時があってもいいんだなと、思えるようになりました。」

人混みで吠えるイヌに対して、飼い主さんの多くが、申し訳なさそうな顔をしていますね。多くの飼い主さんに知ってほしい話です。

■ ペットの健康は、幸福でいるための土台。

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——最後に、ペットの生活は豊かであるために、私たち飼い主の責任として、何ができるのかついて、山口さんのお考えを聞かせて下さい。

「僕自身が、フォーカスしているのは、ペットの幸福ですが、健康は、幸福のためにとても大事なものです。ペットの老いは、7歳ぐらいから始まると言われていますが、平均寿命が伸びている今、人生の半分以上が老いとの付き合いになるわけです。その時期を楽しく平穏に、そして幸福に過ごすには、突き詰めて考えると、イヌの場合、飼い主との関係が非常に大切です。なぜかというと、イヌにとって、最も重要なパートナーは飼い主だから。飼い主が、イヌのことをよく見て、理解を深め、少しでもストレスを取り除く努力し続けることで、イヌは自然とストレスのない環境にいれるわけですし、避けられたかもしれない苦しい病気になってしまう確率も下がります。」

最近は、ペットの健康管理のために、ドッグフードやペット用品を見直す飼い主さんが増えてきました。用品やサービスを取り入れるだけではなく、まずは愛犬の日常を見つめ、彼らにとっての不安や喜びを理解することが、大切なペットとの日々をより豊かにするための基本だということを、私たちは肝に命じなければなりません。