犬 噛みつき
犬の口は人で言えば手のようなものなので、犬にとって噛むことは自然なコミュニケーションのひとつであり、様々な意味を持ちます。今回は、犬の「噛む」という動作についてお話しします。

本気咬みと甘噛みの違い

犬 噛みつき
飼い主さんの中には、血が出るほど強く噛まれたら本気咬みだと判断することがありますが、この二つの違いは噛みの強さではなく、噛むときの犬の気持ちの違いです。大型犬や歯が鋭い犬に甘噛みされて血が出ることもありますし、本気咬みされても場合によっては流血にいたらないこともあります。
本気咬みと甘噛みでは対処の方法が全く違います。まずは犬がどちらの噛み方をしているのか見極めることが大切です。

本気咬み

恐怖や攻撃的な感情からくる本気噛みの場合は、噛む前に犬は様々な方法で伝えようとします。
後ずさりする、唸る、鼻の頭にしわを寄せる、唇をめくって歯を見せるなどの行動が見られます。そのボディランゲージを無視して犬の嫌がることをしてしまった時に本気で咬まれます。
本気咬みが見られる犬に対しては、時間をかけて慣らすなどの対応が必要ですが、素人では犬のボディランゲージを読み切れず危険なため、ドッグトレーナーなどに相談し、監督してもらった上で行う方が良いでしょう。

甘噛み

甘噛みは子犬に多く見られ、犬同士で取っ組み合いをして遊ぶときにも見られます。
犬は、跳ね回ったり、尻尾をブンブンと振ったりして興奮しているときや、遊ぼうと誘う際に甘噛みします。顔をめがけて甘噛みされたり、皮膚の柔らかい所を噛まれたりすると血が出るほどの怪我に繋がることがありますので、甘噛みといえど注意が必要です。

甘噛みをする場合は、おもちゃを生き物のように動かしてそっちを噛むよう注意を逸らしたり、甘噛みをしたら遊びをやめて無視を続けることで、手足を噛んだら遊んでもらえないことを学習して、甘噛みが治まることがあります。

様々な意味を持つ「噛む」という動作

犬 噛みつき
日本語では「噛む」という言葉一つで犬が起こす全ての噛むという動作を表しますが、日本語でも、「噛む」の他、ケガをするレベルの場合に「咬む」という字を使うことがあるように、英語ではさらに複数の英単語が存在し、使い分けています。

bite :動物が獲物に噛みつく、噛み切る
chew :奥歯ですりつぶす
snap :パクっと噛みつく
crunch :バリバリと音を立てて噛む
nibble :かじる

このように様々な意味を持つ「噛む」ですが、実際に犬がこのような行動を起こすときにどのようなことを意図しているのでしょうか?

bite

「噛みつく」と言われたときに一番よくあるのは”bite”です。
この場合、「防御」や「闘争」のためにこのような行動を同時に取ることがあります。

鼻の上にしわを寄せている。
歯をむき出しにしている。
ウ~と低く唸っている。
耳を寝かせている。
尻尾を低く振っている。
背中の毛が逆立っている。
体勢が低い。

・防御の場合
何か自分に危害を加えられると感じ身を守るために咬んでしまうことがあります。犬が許容できない距離であったり、「近寄るな」と犬がサインを出しているのに人が気づかなかったりする場合に起こりやすくなります。

・優位に立ちたい場合
犬が自分以外の犬や人に対して優位に立ちたい(服従させる)ために咬んでくることがあります。咬んだ相手が降参すれば自分が優位に立ち、今後は優位に立つものとしてふるまっていくことになります。これは相手が犬であっても人であっても同様です。

・大切なものを守りたい場合
自分のお気に入りのものや場所などを守りたい時に咬んでくることがあります。大事なおもちゃを取られたと感じた場合や気に入っている場所(椅子やソファーなど)に自分以外の犬や人がすわった場合などが考えられます。

snap

急に咬まれた、前ぶれもなく咬まれたなどの場合で、びっくりさせてしまった時に起こりやすい行動です。

・食事中に急に触った
・寝ているときに触った
・高齢で耳が聞こえにくい犬の場合
・出会いがしら

などの場合に引き起こされやすいので、食事中、寝ているときは気をつけてください。特に、犬たちは13歳ごろから耳が聞こえにくくなることが多いので、触る前に声をかけるなどして、犬の後ろから急に触ったりしないようにしましょう。

nibble

この行動は、本気で咬むというよりは甘えている行動に近いでしょう。気を引くためであったり、何かを要求するときに起こる噛み方で、血が出たりひどい歯型が残ることはほとんどありません。

まとめ

犬が「噛む」行動には様々な意味合いがあります。甘噛みなのか本気咬みなのか先ずは見極めましょう。本気咬みの場合、いきなり咬みつくこともありますが、ほとんどの場合は、何らかの前兆があります。それらをしっかり読み取って、犬が示しているサインを見逃さないようにしましょう。しかし、急にとびかかってくる場合もあります。万が一咬まれてしまった場合は、すぐに患部を水道水で洗い流し、病院で診察を受けるようにしてください。