俳句で「猫の恋」と言えば春の季語。春は猫の発情期で、オスがメスをめぐって大ゲンカをしたり、メスが大声で鳴いてオスを誘ったりと騒がしくなります。「うちの子もそろそろ発情期かも」という飼い主さんにとっても、愛猫の避妊・去勢手術を真剣に考えるべき季節の到来です。

猫の妊娠率は100%! そのうえ多産です


メス猫の発情は日照時間が増え始める2〜4月と、6〜8月頃に多く起こります。メスが発情することでオスの発情が誘発される仕組みで、交尾の決定権はメスにあります。人間や犬、牛や馬などは定期的に排卵が起こる自然排卵動物ですが、猫は交尾の後に排卵が起こり、妊娠の確率が高い交尾排卵動物です。さらにメスは発情期の間に何度か交尾を行うことで、ほぼ100%の確率で妊娠するとされています。

妊娠期間は約2か月で、一度の出産時に3〜6匹の子猫を産むのが一般的。出産から2か月後には再び出産可能な状態に戻り、1年に3回出産する場合もあります。もし愛猫が家と外を自由に行き来していて発情を迎え、交尾を行うと、子猫が年に3回6匹ずつ、計18匹も生まれる可能性があるのです。

その子猫たちも生後1年ほど経つと妊娠が可能になるので、放っておくとネズミ算的に猫が増えていくことに。そのすべてに責任が取れれば良いのですが、現実にはもらい手を探すのも一苦労でしょう。こうしたことを考えると、避妊・去勢手術は猫と暮らす上で必ず向き合わなくてはならない事柄なのです。

避妊・去勢手術を受けさせるメリットとデメリット


そうは言っても愛猫に手術を受けさせるのは抵抗がある…という方もいるでしょう。手術によって愛猫にどんな変化があるのか、メリットとデメリットに分けて見ていきましょう。

避妊・去勢手術のメリット

まずは望まない妊娠を避けられることが挙げられます。避妊手術をしていないメス猫が外へ出て自由に行動すると、ほぼ確実に子猫を産むでしょう。飼い主さんの知らないうちに妊娠・出産してしまい、生まれた子猫が保健所へ連れて行かれ殺処分される…そんな悲しい出来事が、残念ながら現実に起きています。子猫を産ませて育てる覚悟がないのなら、愛猫に避妊手術を受けさせること。それが猫の殺処分数を減らすことにもつながります。

そのほか、メスでは乳腺腫瘍や子宮内膜炎、子宮蓄膿症、オスでは精巣腫瘍といった性別特有の病気を予防できます。また、オスでは縄張りをめぐるケンカが減り、それと同時に臭い尿スプレーもかなりの確率でなくなります。オス・メスともに発情期のストレスが軽減されるので長生きできるとも言われています。

避妊・去勢手術のデメリット


生殖機能を取り除くため、当然ですが子どもを産むことはできなくなります。発情期のエネルギー消費がなくなるため、手術を受けた後は肥満になりやすい傾向も。全身麻酔のリスクも考慮すべきでしょう。ただし、手術によって得られるメリットの大きさに比べると、デメリットは小さいと言えそうです。

手術を受けることになったら

愛猫に避妊・去勢手術を受けさせることに決めたら、まずは動物病院に連絡をして、手術日を決めましょう。その際、いくつかの注意点があります。

いつから手術を受けられるのか

一般的には生後半年頃になると発情がくるといわれています。臓器の発達もしっかりしてきますのでこの時期から手術を受けることができるようになってきます。

手術前の注意点

ワクチン接種は済ませている?

動物病院によってはワクチン接種が必須の場合があります。ワクチンには有効期間があるので、健康な時に接種して手術に望むと良いでしょう。

血液検査が必要な場合も


全身麻酔をするために、体が麻酔薬を代謝し排泄できる機能が十分かを見る必要があります。その際多く行われるのが血液検査です。病院により検査する項目は多少異なりますが、おおむね肝臓機能、腎臓機能や血液の血球成分などを測定し麻酔ができるかどうかの指標とします。

手術前の絶食は厳守!

基本的に手術前の半日ほどは絶食させて胃の中を空っぽにします。また手術当日は水も飲ませないようにしましょう。(絶食、絶水の時間も病院によりけりです。空腹時間を設けて麻酔による嘔吐した際に誤飲し誤嚥性肺炎などを防ぐために行います。病院によって時間がことなるので断定しないほうが良いでしょう)これは、麻酔による手術中の嘔吐を防ぐため。獣医師の指示をよく聞き、必ず守りましょう。

手術後の注意点

安静にさせましょう

通常、猫の去勢手術は日帰り、避妊手術は1泊で行われます(宿泊の有無や日数は動物病院によって異なることがあるので断定しないほうがいいかもしれません)。麻酔が完全に覚めて異常がないことが確認できてから帰宅しますが、しばらくは傷の痛みもあって元気がないように見えます。

それも当然の話で、猫は小さな体で全身麻酔の手術を終えたばかり。しばらくはそっと見守りましょう。消化器の働きも鈍っているので、半日ほどは食事を与えないほうが賢明です。

傷口をなめないよう注意


術後の猫は、傷口をなめないようにエリザベスカラーや腹帯をした状態で帰宅します。しかし、何らかの理由でこれらが外れてしまうことがあります。そんな時にきちんと装着し直せるように、動物病院で着せ方を習っておくと良いでしょう。

エリザベスカラーの場合、緩いと顔が抜けてしまいますが、苦しくならないように指が2本ほど入る隙間を開けて装着しましょう。また、猫が傷口をなめてその部分がただれてしまったり、傷口が開いてしまったりした場合は、すぐに動物病院を受診しましょう。

食欲と排泄をチェック

帰宅した当日は元気のない愛猫も、翌日〜遅くとも3日後にはほぼ通常通りの様子に戻ります。3日以上経っても食欲がない時や、排便や排尿が安定しない場合は、獣医師に相談しましょう。

まとめ

愛猫に手術を受けさせるかどうかを決めるのは飼い主さんです。手術を受けさせるなら、メリットとデメリットをよく知った上で決断を。出産させる場合は生まれた子猫のもらい手などをきちんと決めておきましょう。いずれのケースでも愛猫とのライフプランをしっかりと立て、飼い主さんも愛猫も幸せになれる選択をしてください。

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