顔に対して大きな三角形の耳は、猫のチャームポイントの一つ。「猫耳」が人間にとってどれほど魅力的かは、さまざまなデザインのモチーフとして使われていることからも分かります。でも、猫の耳はかわいいだけではなく、とても高性能であることをご存じですか? 人よりはるかに優れた猫耳の能力をお伝えします。
情報は目よりも耳から入手!
猫はもともと獲物を捕らえるハンター。狩りを行う時間は、獲物となる小動物が活動する夕暮れ時や明け方か、車や人通りが少なくなる夜が中心です。猫の聴覚は暗い場所でも獲物の動きを察知できるように発達しているのです。
猫の聴覚は犬の2倍、人の8倍(!)と言われています。ちなみに目は、動体視力には優れているものの視力自体は低く、0.2〜0.3程度。色の識別もあまりできません。また、嗅覚は犬には劣るものの、人間の6倍もの嗅覚受容体(臭いを感知する細胞)を持っているため、さまざまな臭いを嗅ぎ分けることができます。
さらに、猫は音のする方向や距離を測るために左右それぞれの耳を180度回転させることができます。また、耳の先端に少し長い毛がまとまって生えていますが、これは「房毛(ふさげ)」と呼ばれ、風向きや音波をキャッチするためのセンサー。猫の耳は、まさに高性能なアンテナそのものです。
猫の聴力のすごさは、こんな場面で発揮されます
日常のふとしたシーンで、猫の優れた聴力は発揮されています。愛猫との生活の中で、こんな経験はありませんか?
帰宅を玄関で待っている
家に帰ってドアを開けると、愛猫が玄関でお出迎え。仕事の疲れも吹き飛ぶ瞬間ですよね。でも、「どうして私が帰ってくることが分かったの?」と不思議に感じませんか?
これは、他人と飼い主さんの足音などの微妙な違いを猫が聞き分けているから。飼い主さんの車の音や靴音などを聞きつけて「帰ってきた!」と先回りして待っているのです。
何もない壁をじっと見つめる
突然、愛猫が何もない壁の一角を見つめて動かなくなることはありませんか?人間にはただの真っ白な壁に見えるので、「見えない何かがいるの?まさか幽霊!?」などと思わず怖くなってしまう飼い主さんも多いようです。
しかし、実際には人に見えないくらいの小さな虫や、壁の向こうにいる小動物の足音などを猫の耳がキャッチしているのだと考えられます。
女性になつき、男性は敬遠する
同じ猫好きなのに、女性の方には猫が寄ってくるのに男性は無視される…。よく見られる光景ですが、これには女性と男性の声質が関係しています。猫は高音域が聞き取りやすいと言われており、そのせいか女性の高い声を好む傾向があります。
反対に男性の野太い声は捕食動物を連想させるため、苦手なのだとも。ただし何度も顔を合わせるうちに男性の声に慣れ、女性と同じようになつくケースも多いようです。
猫の耳のために、飼い主さんが気をつけたいこと
人間よりはるかに優れた聴覚を持つ猫。それがゆえに、人には思いもよらないことが起こる場合も。
テレビや音楽プレイヤーの大音量
テレビの音量が大きすぎる時や、CDプレイヤーなどから大音量で音楽を流すことは、猫に苦痛や恐怖を与えかねません。
毎日のことだと猫も大きな反応はしませんが、ストレスは確実に感じています。音量はほどほどに抑えてください。
大きな声でケンカする
猫を飼っている家庭でケンカが始まると、猫がおろおろしたり不安そうに鳴き出したりすることがあります。
「私たちがケンカしているから心配しているんだ」と思いがちですが、これは普段と違うケンカの声に驚き、ストレスを感じている状態。愛猫のためにも家庭は円満に。
首輪に鈴を付ける
首輪に鈴を付けている猫は多いと思います。しかし、耳の良い猫にとって、自分の首元で常に音が鳴っている状態はストレスになると考えられます。
外で迷子になった時などに鈴の音が手がかりになることもあるので一概に悪いとは言えませんが、付けるかどうかは慎重に判断した方が良さそうです。
まとめ
かわいらしい猫の耳は、想像以上の聴力を備えた情報収集ツールだということがお分かりいただけたでしょうか。猫の耳には、飼い主さんの声は他の誰とも違う、「たった一人の特別な人」として認識されています。
飼い主さんの足音は、猫にとって心躍る帰宅の合図なのです。それほど優れた聴覚を持つ猫なので、くれぐれも大きな音や声を出してストレスを与えないように注意してくださいね。