人間にとっても平常心ではいられない被災時、デリケートなペットが抱く不安は推し量れません。中にはパニックになり平常時とは異なる行動をとる可能性もあります。実際に、東日本大震災においては、ペットが避難所から脱走したり、避難所への移動中にはぐれたり、飼い主がペットを置き去りにせざるをえなかったりと、飼い主がペットと離れ離れになる事例が多発しました。そこで本コラムでは、ペットのために普段から心がけるべき防災対策とそのグッズについてお伝えしていきます。

■ペットの防災のために備えること

「災害時、ペットはどうするの?」、これは多くの飼い主さんの懸案事項だと思います。環境省が提示する『災害時におけるペットの救護対策ガイドライン』によれば、災害時において、ペットは同行避難を基本としています。これは動物愛護の観点だけではなく、放浪動物による人への危害防止や過剰繁殖などによる公衆衛生環境悪化など生活環境保護の観点から必要な措置とされています。

被災時にまずネックになるのが避難所への移動です。これをスムーズにするための対策として、
①避難所と避難ルートの確認
②該当避難所における同行避難の可否の確認
③見慣れない人や他の動物への耐性をつける
④狭い避難所での生活空間となるケージやキャリーバックに入ることに慣らせておく
⑤被災時の免疫力低下に備えた各種ワクチンの接種
⑥不必要な繁殖防止のための不妊・去勢手術を行う
⑦ノミなど寄生虫の予防・駆除
⑧不必要に吠えたり鳴いたりしないようしつける
以上の項目を日頃からできるだけ入念に行っておきましょう。

■東日本大震災から学ぶ防災

飼い主も含め、取り巻く環境が瞬時に激変する災害時には多くのペットがパニック状態に陥ります。平常時は飼い主にべったりのペットもひとり外に飛び出してしまったり、抱え込んでも制御できないくらいの力で暴れてしまったりという行動を取ることも考えられます。実際に東日本大震災の時にも行方不明になるペットが相次ぎ、失踪届けが出されたものの飼い主の元へ戻っていないというペットも多くいる状況です。

そこで必要なのが、ペットを迷子にしないための身元確認ができるグッズです。ネームプレートや首輪などの目印をつけると同時に、マイクロチップ等を用いるのも良いでしょう。マイクロチップは体内に埋め込むため脱落の可能性が低く、そこに記録された15桁の数字により確実な個体識別が可能です。

■最低限用意しておくべき防災グッズ

被災時におけるペットの最大の懸案事項である行方不明・迷子に対する防災対策を講じてきました。最後に”移動”という観点から、最低限用意しておくべき防災グッズをお伝えします。

【ペットの防災対策チェックリスト】
①入り慣れたケージやキャリーバッグ
普段から入る癖をつけ、慣らしておくことも忘れずに。お気に入りのおもちゃや飼い主のにおいがするものを入れておくと安心させられます。

②靴や靴下、またはハンカチやガムテープなど代用できるもの
移動は①の中ですが、避難所等もしガラス片など落ちていても怪我をすることなく、足先を守るために用意しておきましょう。

③多めのタオルもしくは毛布
怪我をした時の止血や防寒など様々な用途で使えるので多めに準備します。

④ビニール袋
道中の排泄に備えましょう。

⑤薬などの救急セット
怪我に備え、ペットに使える消毒剤や包帯などを用意しておきましょう。持病があるペットの場合、常備薬も忘れずに。

※上記チェックリストはあくまで被災時の”移動”(家から最寄り避難所程度を想定)に特化したものです。