ペットと適切な関係を構築するための注意点（獣医師さんがアンサーvol.14 菊池 亜都子 先生） | ペットの医学

■ あなたとペットの関係は主従関係ではない

「下に見られないように主従関係をしっかりわからせなきゃ！」そう思われる飼い主さんはいまだに多いような気がします。特に犬に関しては、少し前までこのような考え方が主流でしたから、仕方ないかもしれません。しかし、犬も猫も人間である飼い主さんのことを主従関係で見てはいません。決して上の立場に立って飼い主さんを支配しようなどとは思っていないのです。では、犬や猫は飼い主さんのことをどのように思っているのでしょうか。

犬の場合

犬は本来、群れで生活する動物なので、飼い主さんのことも群れの一員として見ていることは間違いないでしょう。ただし、その群れとは、優先順位をめぐって争いが繰り広げられる集団ではありません。群れのメンバーが一緒に暮らし、お互いをよく知り、協力し合える「家族」としての集団を意味します。

猫の場合

猫の場合はどうでしょうか？猫は犬と違って社会性がない動物だと思われる方も多いのですが、そうではありません。猫は十分社会性のある動物です。猫も、一緒に暮らす飼い主さんのことを敵だとは思っていません。犬と同じように、「家族」だと思っているはずです。

■ 犬や猫を飼う上で気をつけること

犬や猫を飼う上で、まずは、栄養バランスの取れた食餌を与える、安心して休める快適な環境を提供する、運動や遊びでストレスを発散させる、体調に注意するといったことは、基本中の基本ですね。そして、飼い主さんはぜひペットにとって頼れる存在になってください。力ずくで言うことをきかせるのではありません。怖がらせておとなしくさせるのではありません。「飼い主さんの指示に従ったらいいことがある」、「飼い主さんの喜ぶ顔を見るのはうれしい」、「飼い主さんのそばにいると安心する」　そう思ってもらえるような信頼される飼い主さんになってください。

例えば、叩く、音が鳴る缶を投げつける、マズルをつかむ、散歩中に思いっきりリードを引くといった怖がらせる罰は、飼い主さんへの信頼を失ってしまいます。動物によっては、それがずっとトラウマになってしまい、そうなると信頼を回復するのに時間がとてもかかります。

以下に掲げた【ペットと適切な関係を築くためのリスト】を参考にしていただき、ペットにとってぜひとも頼れる飼い主さんになってください。

ペットと適切な関係を築くための注意点リスト

□ 1.怖がらせる罰は与えないようにしましょう
□ 2.困った行動が起きるような状況を作らないようにしましょう
□ 3.困った行動が起きたら、無反応を貫きましょう
□ 4.望ましい行動をしている時は積極的にほめてあげましょう
□ 5.要求をしてきたら、号令を与え、従ったらそのご褒美として要求に応えてあげましょう

■ なぜ好き勝手にやらせてはいけないの？

あなたとペットの関係は主従関係や上下関係ではないので、体罰を与えるなど、怖がらせるような罰を与えて飼い主の威厳を示す必要はありません。だったら、ペットのわがままは何でも聞いていいのでしょうか？好き勝手にやらせてしまっていいのでしょうか？いえいえ、そうではありません。ペットである犬や猫は、私たちと共に人間社会で暮らしていかなければなりません。すべてを彼らの思い通りにさせてしまっては、人間社会から受け入れられないことも出てきてしまい、最終的に不幸な結果を招くことにもなりかねません。犬や猫のわがままをいつも聞いてあげて、好き勝手にやらせてしまうことは、人間にとってもペットにとっても決して幸せなこととは言えませんね。

こうしたことから、人間社会で暮らしていくためのルールを、ペットに教えてあげることはとても大切です。そのためのしつけやトレーニングは必要になるでしょう。しかし、ここで言うしつけやトレーニングは、ペットの地位を下げるためのものではありません。あなたとペットが適切な関係を築き、いつまでも一緒に幸せに暮らしていくためのものです。

■ まとめ

まずは飼い主さんが心に余裕を持つことが大切です。飼い主さんの気持ちをペットは敏感に感じ取ります。そして、犬や猫の個性を、ある程度は受け入れてあげて、より良好な関係を築いていきましょう。愛犬や愛猫にとって頼れる存在になれるといいですね！