■ 犬の肥満は危険がいっぱい
ぷくぷくと太った姿は愛らしい印象を与えるかもしれません。どんなに可愛く見えても、それは肥満状態。肥満とは、体に過剰な脂肪が蓄積した状態のことをいい、危険がいっぱいです。
例えば、肥満によって、足など関節への負担が増加するため、膝蓋骨脱臼や関節炎などを発症しやすくなります。ダックスフントなどに多い椎間板ヘルニアも、肥満によって椎間板への負担が増加し、症状を悪化させます。また、肥満は心臓への負担も大きくなりやすく、さらに首のまわりに脂肪がつくことで、気道が圧迫されて呼吸がしにくくなります。
それだけではありません。暑さに弱くなったり、運動したがらなくなったりして、抵抗力が弱くなってしまいます。このように、肥満は病気を招く危険性がいっぱいなのです。
■ 愛犬が肥満かどうかをチェックしましょう
人間の場合は、自分で体重をチェックしたり、健康診断を受けたりして、体重管理をすることができます。しかし、犬の場合は、自分で衣食住の健康管理ができません。すべては飼い主さんにかかっているのです。
肥満かどうかを判断するために、日頃から体重を測定する習慣をつけ、適正体重との差をチェックしておくことが大切です。適正体重として、犬種ごとに定められた標準体重をそのまま用いる方法がありますが、個体によって体格も異なるため、犬種ごとの適正体重があてはまらない場合も少なくありません。
その場合は、愛犬が1歳だった頃の体重、つまり成犬になりたての頃の体重を適正体重とするのがよいと言われています。愛犬の適正体重がわからない場合は、かかりつけの獣医師に聞いてみるとよいでしょう。その他に、実際に犬の体つきを見たり触ったりしながら確認して、肥満かどうかを評価する方法もありますので、ぜひチェックリストにしたがって、確認してみましょう。
■【危険な兆候リスト】 ★1つでも当てはまっていればダイエット開始です!
□適正体重の15%を上回っている(例:適正体重が5㎏の犬の場合、体重が5.75㎏を上回ると肥満です)
□胴をなでた時、肋骨が容易に触れない
□真上から見た時、腰のくびれがないか、ほとんど見られない
□横から見た時、腹部の吊り上げがないか、垂れ下がっている
■【対策リスト】★なるべくたくさん試してみて、愛犬に合った方法を見つけてください
□フードの量を減らす:どのくらい減らすのかはかかりつけの獣医師に相談してください。
□フードを与える回数を増やす:与える量を増やすのではありません。
□フードをお湯でふやかしたり、ゆでたキャベツやおからなどを加えてカサ増しをする。
□フードをダイエット用のものに変える:いきなり変えるとお腹を壊す場合があるので、少しずつ切り替えていきましょう。
□人間の食べ物を与えないようにする
□おやつを与えないようにする:トレーニングなどで使用する場合は、1日に与える量のフードから与え、その分食事としてのフードを減らします。
□おやつを小さく分けて与える:どうしてもおやつを与えたいという場合は、細かくちぎれるタイプのおやつを用意し、小指の先くらいのサイズにして与えましょう。たとえ小さくても、何度ももらえる方が犬もうれしいはずです。
■ 正しい方法でダイエットにチャレンジ
人間がダイエットをする場合、食事管理や運動などさまざまなものがありますが、犬の場合は、食事管理をメインに行いましょう。太ってしまった犬を無理に運動させようとすると、関節や心臓などに負担がかかりやすくなるためです。
まずは、食事管理をして、体重をある程度減らしたら、運動量を増やすなどしてバランスよくダイエットさせてあげるといいでしょう。もちろん、人間と同じく無理なダイエットは禁物です。犬は自分の意思でダイエットを行うわけではないので、飼い主さんがきちんとダイエット目標と計画を立て、犬にストレスを感じさせないようペースを守って行いましょう。
記載した対策リストは、主に食事管理をメインに工夫していただきたいリストになります。このうち1つを実行するのではなく、できるだけ多くのリストを試してみて、あなたの愛犬に合った方法を探してください。ダイエットの目標や計画の立て方、実際のダイエット方法に関しては、必ずかかりつけの獣医師の指示のもと行うようにしてください。
日本大学生物資源科学部獣医学科卒業。
卒業後は、東京大学大学院に進学して、犬猫の臨床行動学を学び、現在犬猫の問題行動治療に従事している。
自身も愛犬の問題行動に悩んだ経験があり、行動治療という獣医療を通じて、犬猫と飼い主さんが幸せに暮らしていく手助けをしたいという気持ちで日々邁進中である。