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身体の不自由な人の命を預かる補助犬。普段犬を飼っている方はうちの犬が同じことをできるとは考えられない…と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は補助犬が人を導くまでになるまでの多層にわたるプロセスをご紹介します。

■ 介助犬の適性

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photo by http://www.kawamura-gishi.co.jp/

介助犬になるための訓練を受ける犬は、身体的・性質的ともに介助犬として適切であることが求められます。適正項目は以下のように定められています。

身体的適正

(1) 体高や体重は、使用者のニーズに対して適正なものであること。
(2)  健康で体力があり、遺伝性疾患及び慢性疾患を有していないこと。
(3) 被毛の手入れが容易なこと。

性質的適正

(1) 健全で陽気な性格であり、動物や人間に対して友好的で臆病でないこと。
(2) 人間と一緒にいることを好むこと。
(3) 他の動物に対して強い興味を示さず、挑発的な行動をしないこと。
(4) 攻撃的でなく、過剰な支配的性質を有していないこと。
(5) 大きな音や環境の変化に神経質でなく、落ち着いていられること。
(6) 平均的な触覚、聴覚及び感受性を有していること。
(7) 集中力と積極性及び環境への順応力があること。
(8) 乗り物酔いがないこと。

このように、介助犬の訓練を受けるだけでも非常にハードルが高いことがわかります。

■ 訓練の内容

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介助犬としての適性が認められたら、いざ訓練。
介助犬の訓練は、基礎訓練、介助動作訓練、合同訓練の3段階に分かれており、訓練終了後も使用者への引き渡した後も継続的な訓練及び指導を行うことが定められています。

【基礎訓練】

基礎訓練とは、犬に対する基本的なレベルの訓練。実働日数として60日間以上行うことが定められています。
通常、生後12か月から24か月の間に訓練を開始するのが望ましいとされています。

《基礎訓練において訓練される基本動作》
[1] 呼んだら来る
[2] 座る、伏せる、待つ、止まる
[3] [2]の状態について、解除の意思表示があるまで維持できる
[4] 強く引っ張ることなく落ち着いて歩く
[5] 指示された時・場所で排泄できる
[6] 音響、食物や他の動物など様々な刺激や関心の対象を無視できる
[7] 使用者に注目して集中することができる
[8] 指示された場所(部屋、車等)に入ることができる

さらに、これらの基本動作は室内におけるだけでなく屋外においても行えるように訓練されなければなりません。
そこで、次のような環境において必要に応じて訓練を行います。ただし、この屋外訓練は一定程度習熟された犬のみ進むことができます。
・公共交通機関(電車、バス等)
・ホテル等の宿泊施設
・スーパー、百貨店等の商業施設
・レストラン、喫茶店等の飲食施設

【介助動作訓練】

介助動作訓練は、介助対象者の日常生活動作を介助するために必要な動作訓練。実働日数として120日間以上行うことが定められています。
物の拾い上げや、 ドアの開閉、車いすへの移乗介助、階段昇降の介助、衣服や靴等の着脱などを行えるように訓練します。
これらの訓練は基礎訓練同様、室内のみならず屋外においても行います。

【合同訓練】

合同訓練は、実際に使用者本人が犬に指示を出し、基礎動作および介助動作を行わせる実践的な訓練です。実働日数として40日間以上行うことが定められています。
使用者の障害やニーズ、生活環境に合わせた訓練や、使用者に対する犬の飼育管理方法指導などを行います。

■ もし介助犬を見かけたら…

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photo by http://farmersmarkets.jp/

このように非常に多くの壁を乗り越えて、犬は介助犬になります。
しかし、介助犬も動物です。ときにはミスや危険に気づかないことがあります。
例えば、これは盲導犬の例ですが信号において。盲導犬は音付き信号では流れてくる音によって信号の色の判断ができますが、音の出ない信号では判断が難しいことがあります。そんなとき、周りの人からの「赤ですよ」「青になりました」という一言があるだけで使用者・盲導犬が安心することができます。

もし街で介助犬を見かけたら、温かな目で見守ってあげましょう。あなたのほんの少し思いやりが、使用者と介助犬の大きな安心につながります。