犬 認知症
祖母の家で飼っている愛犬、きなこ。小さい頃から祖母の家に遊びに行くと、いつも真っ先に出迎えてくれて私に飛びついてきました。最近、久しぶりに祖母の家に遊びに行くと、きなこはお昼寝中で私に気づくことなく、ぐっすり眠っていました。お年寄りになって、体力が落ちたのかなと気にしていませんでしたが、起きてからも祖母が名前を呼んでも振り向かず、リビングをうろうろ歩き回るきなこ。これってもしかして…認知症でしょうか?

■ペットの認知症とは?

近年、高齢者の多くが発症する認知症がニュースとして取り沙汰されることが増えました。認知症は、単に老化によって物忘れが激しくなるのではなく、脳の神経細胞が何らかの原因で壊れることによって、引き起こされる症状を指します。そして、驚くべきことに、認知症になる確率は、私たち人間よりも犬などのペットの方が高いということが、獣医療の長年の研究によって明らかにされています。ペットが住む環境の改善が進み、人間と同じく高齢化が進むペットたちにとって、認知症がごく自然に起きるものになってきたのです。

犬の認知症は、正式には「認知障害症候群」と言います。これは、少しずつ進行していく人間の「アルツハイマー型認知症」と似ているもので、突然、複数の症状を発症するのではなく、一つひとつの症状を少しずつ発症し、進行していきます。一般的に11歳前後で発症することが多く、犬種によっても発症する確率は、異なるようです。主な症状としては、飼い主の呼びかけに反応しない、昼間は寝ていて夜になって起きる(昼夜逆転)、同じ場所をぐるぐると歩き回る、トイレを決まった場所でできなくなることが増える、などが挙げられます。進行が進むと深夜に夜泣きをしたり、身動きを取りづらくなりうずくまってしまうなどの重い症状が出ることもあります。

■ペットの認知症を防ぐために飼い主ができること

犬 認知症
脳の老化とともに壊れてしまった神経細胞は、修復して元に戻すことができません。そのため、認知症になってしまってから治療を試みるのではなく、日頃から飼い主がペットの認知症を予防する習慣をつけることが重要です。ペットの認知症予防で重要になるのが、「規則正しい生活習慣」と「適度な刺激」です。狭い場所で生活していたり、食事の栄養が偏っていないかなど、生活習慣に気をつけて、ペットにとって、快適に過ごすことのできる環境を整えててあげましょう。

また、人間と同じく単調な過ごし方が続いてしまうと、ペットの認知症も発症しやすくなると言われています。できるだけ多く話しかけたり、新しい遊具をあげる、音楽を聴かせてあげるなど、積極的に脳に刺激を与えることも認知症の予防につながるでしょう。

■大切なペットと長く一緒にいるために

ペットの認知症は、人間の場合と同じく、早期発見と早期治療がとても大切です。少しでも認知症の傾向があると感じる場合には、早めに獣医の診察を受けましょう。早期発見ができれば、適切な治療によって進行のスピードを遅らせ症状の深刻化を防げる可能性もあります。また、飼い主さんの判断では、早期発見が難しい場合がありますので、動物病院での健康診断に通じて、ペットの様子を定期的にみてもらえるようにしておけば、早期発見の可能性が高くなります。大切なペットと楽しく、長く一緒にいるために、日頃の予防に加えてペットの小さな変化にも気づける環境をつくるようにしましょう。